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できるところから一つずつ

できるところから一つずつ

2012年

コスモス1月号 (仲 宗角 選)

萩の花豊かに活けて日本人五人で見たり中秋の月

杳き日に文化を発信せしギリシャ今は国債危機を拡げる

刃をねかせスッと削ぎとる生ハムの透き通りさうに薄きひとひら



コスモス2月号

雨晴れて白く光れる碑面には池田勇人の〈筆塚〉の文字

池田首相の頃の日本で就職し結婚もしき 子も産みたりき

「He was born(生まれたよ)」眉まだうすきみどり児の画像が届く電子メールに

目を瞑り口を時々動かしてスカイプ画面にみどり児眠る



コスモス3月号

カナダ住まひの息子一家と正月を日本で過ごすスーパープラン

「ベッドよりよく休まる」とアンが言ひ畳に延べし蒲団にもぐる

時差ボケで覚めてしまひし孫と行く夜明けの町のマクドナルドへ

初めての習字に飽きて一年生みかんに墨を塗りはじめたり

書き初めは君の名前だ 堂々と〈マーク〉と大きく書いてごらんよ


コスモス四月号

それぞれに立ち止まりたき店があり古本市に夫とはぐれる

ひさびさに屋外に出る本たちが翔び立ちさうな冬晴れの空

「自転車に冬でも乗れる東京」とカナダ育ちが目を丸くする(交通公園にて)

初詣でカナダ育ちの七歳と二礼二拍手さらに一礼



コスモス五月号

街灯に照らしだらせて真夜中の氷雨は白き光を散らす

ケータイの呼びだし音をみどり児の「ククッ・・」と笑ふ声にセットす

「ライオンが干支にないのはなぜなの」と獅子舞を見て七歳が問ふ

流木に羽根を休めて目を瞑る渡りの前の白ふくろふは

「ホーホー」と鳴くばかりかと思ひゐし白梟が「ギャッ」と怒れり



コスモス六月号

わが系譜米大陸に拡がりぬ男孫二人を始まりとして

「人生の元(モト)は取った」と言ひ放ち古稀の仲間が酒汲み交はす

百点のテストを見せし日のやうに息子がベビーの写真を見せる

ミルク粥はじめて食べるひとさじにベビーの口が少しくゆがむ



コスモス七月号(杜沢光一郎選)

夜の空気少しやはらぎ加湿器の水の減り方目立たなくなる  

亡き母の独りの日々を偲びつつ遺品の結城紬をほどく

ぽろぽろと記憶失くして慶子さん逢ふたびごとに穏やかになる

ほんのりと紅にけぶれる枝々に明日は咲くべしソメイヨシノが

どの春の桜もあまり違はぬがそれでも今年の花を撮りたし



コスモス八月号 (岡崎康行選)

巣落ち子を励ますごとく梟が樫の枝(え)にゐてまだ鳴きやまず

怪我せしか心細げに立ちつくす羽毛茶色き巣落ちふくらふ

落ち武者のやうに満身創痍なり流れ着きたる被災漁船は

波風のままに漂ひゐしならむ流れ着きたる船もバイクも

日本の罪にあらねど日に夜に漂着物が浜にたまり来

漂着物分別・処理のボランティアの募集明日にも始まると聞く


コスモス九月号 (大松達知選)

暮れ遅き縹の空に昇り来て弁柄色のスーパームーン

枇杷色のスーパームーン表面のところどころに翳りを宿す

夜更けて真珠の色に光りつつスーパームーン中天にあり




コスモス十月号 (森重香代子選)

「まるで花のミイラのやう」と言ふ夫の視線の先にドライフラワー

不利なことはすぐに忘れる便利さがわが夫の持つ謎の能力

「東京でパンダのベビーが死にました」カナダのテレビニュースが伝ふ



コスモス十一月号  (狩野一男選)

Goh(ゴッホ)をゴッ、Matisse(マチス)をマティッセと発音し英語はかなり不器用である

母鴨に仔鴨三羽が従ひて母.com(はは・ドット・コム)のやうに横切る

歌ふとき起立し胸に手をあてる 「オー、カナダ」孫の祖国の国家

わが祖国が孫の祖国と異なるをまた意識するオリンピックに

楡の木の高みに二つ設置さる蚊食ひ鳥なる蝙蝠の家

「一時間千匹ほどの蚊を食ふ」と蝙蝠たちが期待をになふ



コスモス十二月号 (桑原 正紀選)

「結婚は十五、六年程がよい」また離婚する友が主張す

相性は良けれど決して溶け合はぬバルサミコ酢とオリーブオイル

先生のさつと加へるひと筆に児の絵のリンゴ立体となる

四歳のマークの描く海の絵に鯨も蟹も同じ大きさ

ダイソーの中国人の店員が「ンラッシャイマセエ」と声をかけくる




バンクーバー短歌会

一月

雄樹よりも一足はやく葉を落とし八幡様の雌銀杏寒し

太き幹どつしりと立つ雄銀杏わずかな風に黄葉を散らせり


二月「雨」

雨晴駅を列車が過ぎるころ海にあはあは冬の虹立つ
(雨晴駅=氷見線の駅。2010年12月の旅行で)

丸みおび線やはらかき手作りの雨畑硯ゆつくりと研ぐ


三月

「七十歳の臓器をあげてどうする」と思へと登録だけはしておく

「連れ合ひを悪く言はぬ」と新年に誓ひしがもう何度も破る



四月  オノマトペ

ヒタヒタと行くもスタスタ走るのもありてマラソン中盤に入る

雪の夜のなべやきうどん蓋とればわつと立ち来るほわほわの湯気


五月

幾たびか三木紀子さんが詠みましし室生寺の塔夫と見上げる

石楠花のなだり緑に拡がりて室生寺の春いまだ浅かり


六月 色

夕霧の着てゐし袍の浅葱色 月の出を待つ東の空は

暮れ遅き空をグイグイ昇り来る赤褐色のスーパー・ムーン


七月

花の朝歯の生え初めしみどり児が小さく口開け「ククッ」と笑ふ

泣き疲れ眠りこみたるみどり児にやさしくあれよ初夏の夢


八月

操業を止めて久しき工場のフェンスに白し昼顔の花

舌の上に淡き苦みを残したり黄色やさしき菜の花ご飯


九月

時を経てなつかしさへと変りくる母をみとりし日々の痛みが 

陽の差せば隠れゐし影戻り来てわれのしぐさをすかさず真似る 


十月

列に従き入国審査を待ちてをり 帰国理由は<母に逢ふこと>

待ち兼ねの息子の写メール届きたり “He was born. Six pounds.”


十一月

トムの持つ小さな猫の縫ひぐるみ押されてミューンと甘き声出す

トムの持つ玩具の猫がミューンとなき飼猫の耳ピクリと動く


十二月

ありし日に友の仕込みしかりん酒をオンザロックで独り味あふ

〈甘酒〉は夏の季語だと教へらる甘酒売りの呼び声付きで


台の会
十一月

明け暗れに莟ゆるめて咲(ひら)きたり青透き通るあさがほ二輪


NHK学園スクーリング

四歳のマークのつくる〈おいなりさん〉つめこみすぎてぽつたりとする

甲高くサイレン鳴らし消防車ぐわーっと冬の街を駆け行く
(甲高くサイレン鳴らし消防車師走の街をぐわっと過ぎる)



GUST 15

“Little Sato”
Mom whispered
to her tummy
Yes, INDEED
tiny, little Sato is there


Towards evening
the marine mist
has set in
Are we pupas
in a huge cocoon ?


on a driftwood log,
sat three snowy owls
with their eyes closed
…… looking quite content
but lost in thought


GUSTS 16


This year again
new anniversaries are added
to my already full calendar;
one day, with sending off a dear friend
another day, with welcoming a new grandson


Forlorn and helpless
a baby coyote is wondering
around the golf course.
Are you looking for foods
or…. looking for Mom?


Two bat houses were installed
in the patio of our complex
“each bat, if any, would eat
one thousand mosquitoes
per day, ….hopefully.”



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